救急車を呼ぶ目安とは?判断基準と不適切利用のリスク

この症状で救急車を呼んでもいいのだろうか

突然の体調不良やケガが起きたとき、多くの方が一度は悩む問題です。

特に高齢者や小さなお子さんがいる家庭では、119番をするべきか迷う場面は少なくありません。

一方で、「大げさかもしれない」と遠慮してしまい、本来救急搬送が必要な状態を見逃してしまうケースもあります。

逆に、緊急性が低いにもかかわらず救急車を利用してしまうことで、本当に必要な人への対応が遅れてしまうことも社会的な課題となっています。

大切なのは、「呼ばないこと」ではなく、“命に関わる症状を見逃さないこと”です。

そこで当記事では、救急車を呼ぶべき症状の目安や、反対に緊急性が低いケース、判断に迷ったときの対処法について分かりやすく解説します。

救急車を呼ぶべき症状の目安

救急車を迷いなく呼ぶべき症状は以下の通りです。

  • 意識がない・反応がおかしい
  • 呼吸が苦しそう
  • 胸の強い痛み
  • ろれつが回らない
  • 急な麻痺や歩行困難
  • 大量出血
  • 激しい頭痛
  • 痙攣が続いている
  • 高齢者の転倒後に動けない
  • 顔色が明らかに悪い

救急車を呼ぶべきか迷ったときは、「命に関わる可能性があるか」を基準に考えることが重要です。

例えば、胸の強い痛みは心筋梗塞の可能性がありますし、突然ろれつが回らなくなった場合は脳卒中が疑われます。

こうした病気は、治療開始までの時間が非常に重要であり、対応が遅れることで後遺症や命に関わる危険性があります。

本来「救急車」とは、その名の通り「急いで救う」ための車です。

つまり、急がなければ、救えない人を助けるための車ということを忘れてはいけません。

また、高齢者の場合は「いつもと様子が違う」という変化も重要なサインです。

急に受け答えがおかしくなったり、歩けなくなったり、呼吸が荒くなったりした場合は、本人が症状をうまく説明できないケースもあります。

「大丈夫だと思ったけれど、実際には重症だった」ということもあるため、迷った際は早めの相談が重要です。

特に高齢者で注意したい症状

■ 高齢者で見逃しやすいサイン

  • 急な食欲低下
  • ぼんやりしている
  • 会話が成立しにくい
  • 立てない・歩けない
  • 微熱が続く
  • 呼吸が浅い
  • 転倒後に痛みを訴える

高齢者は、若い人と比べて症状が典型的に出ないことがあります

例えば肺炎でも高熱が出ず、「なんとなく元気がない」という程度の変化しか見られないことがあります。また、脱水や感染症によって急激に状態が悪化するケースも少なくありません。

特に転倒後は注意が必要です。

一見軽そうに見えても、大腿骨骨折や頭部出血が起きている場合があります。

歩けない」「強い痛みがある」「頭を打った」という場合は、早めの受診が必要です。

高齢者では、“症状の強さ”より“普段との違い”を重視することが大切です。

ただし「歩けない」や「強い痛みがある」といった症状があっても、普段から歩けない方だったり、慢性的に強い痛みがある場合は救急車の適応とはならない場合が多いでしょう。

明らかに救急車を呼ぶべきではないケース

■ 緊急性が低いケースの例

  • 数日前から続いている軽い風邪症状
  • 軽い擦り傷や切り傷
  • 慢性的な肩こりや腰痛
  • 軽度の発熱のみ
  • 通院手段がないという理由だけ
  • 病院で早く診てもらいたい
  • タクシー代わりの利用

救急車は、「緊急に治療が必要な人」のためのものです。

そのため、緊急性が低い症状での利用は、本当に救急対応が必要な人への到着を遅らせる原因になります。

実際には、「病院まで行く手段がない」「待ち時間を短くしたい」といった理由で救急車が呼ばれるケースもあります。

お酒を飲んでしまったので病院まで家族を送れないから、救急車を呼んだ。」というような、あきれるケースさえありふれています。

こうした利用が増えることで、重症患者への対応に支障が出る可能性が大いにあります。

もちろん、本人にとっては不安な症状であっても、結果的に軽症だったということはあります。

重要なのは、“結果”ではなく、“呼んだ時点で緊急性が疑われたか”です。

そのため、「軽症だったから呼んではいけなかった」と過度に後悔する必要はありません。

ただ、一度軽症と診察され入院しなかった症状に関しては、次回から「これは緊急性があるのか?救急車でなければいけないのか?」を一考した方が良いでしょう。

なぜなら救急車を不適切に利用すると、生じるリスクも多々あるのです。

不安であれば#7119に電話して相談しましょう。

生じるリスクについては次項で説明します。

院内トリアージについて

ちなみに、現在は全国の救急外来において「院内トリアージ」の取り組みが進められています。

院内トリアージとは、患者の症状やバイタルサインから緊急度・重症度を速やかに評価して、診察の優先順位を決定する仕組みのことです。

つまり受け付け順ではなく、重症の方から優先的に診察していくことになります。

この取り組みは、命に関わる重傷者の救命率向上と待合室での重症化を防ぐ効果があります。

なお、院内トリアージを取り入れている病院では、救急車での搬送患者にも適応され、「救急車で行くとすぐ診てくれる」のは、もう過去のことです。

むしろ救急隊からの申し送りで、適正な緊急度が伝わります。

もし不適切な救急車の利用がみられる場合は、診察が後まわしにされるばかりか、医師から厳しく注意されるケースもあるでしょう。

不適切な救急車利用によって生じるリスク

■ 不適切利用の主な問題

  • 本当に必要な人への到着が遅れる
  • 救急隊の負担増加
  • 医療現場の逼迫
  • 地域全体の救急対応力低下

救急車の出動件数は年々増加しており、地域によっては救急隊が不足している状況もあります。

その中で緊急性の低い出動が増えると、本当に命の危険がある患者への対応が遅れてしまう可能性があります。

例えば、近くの救急車が軽症案件に対応している間に、重症患者への出動が遠方からになってしまうケースもあります。

また、救急医療は24時間体制で多くの人が支えています。

不適切利用が増えることで、医療従事者の負担も大きくなります。

救急車は「無料で便利な移動手段」ではなく、“命を守るための緊急サービス”であることを理解することが大切です。

不適切な利用によって、リスクを負うのはあなた自身やあなたの家族の可能性もあるのです。

考えてみよう

ある日、隣人Bさんがぎっくり腰で動けなくなり、救急車を呼んだ。

その3分後にあなた(Aさん)の自宅で妻が胸を押さえ「苦しい」と訴えた後、倒れてしまった。

すぐに119番して救急車を呼んだが、直近の救急車は隣人Bさんを搬送中。

Aさんの自宅には直近救急隊が到着するより10分ほど時間がかかって、他の救急車が到着。

その後、すぐに病院まで搬送するもAさんの妻は亡くなってしまう。

その時、Aさんであるあなたは隣人を恨まずにいられますか?

隣人Bさんが「奥様のことは、お悔やみ申し上げます。ですが、私もあの時は動けずに大変だったんです。」と言ってきたとしたらどうでしょう?

妻が亡くなったのは、仕方がなかったと納得できるでしょうか?

救急車以外にも移動手段はあっただろ!お前のせいでで妻は亡くなったんだぞ!!

と怒鳴られても隣人Bさんは仕方ないでしょう。亡くなっている以上、償うことも出来ません。


今回はフィクションですが、実際に似たような事案はいくつもあります。

ただし、現実では加害者側のBさんと被害者側のAさんが距離的に離れており、お互いを認識していないのが普通です。

つまり、問題を問題だと認識できていないため、問題になっていない、もしくは問題になりにくいというのが実状。

ですが、厳然とリスクは存在します。

救急車の不適切な利用には常にこのようなリスクが控えており、だれにでも降りかかり得る問題であると自覚する必要があるでしょう。

救急搬送後に困りやすい“移動”の問題

■ 救急搬送後に起こりやすいこと

  • 退院時の移動が難しい
  • 車いす移動が必要になる
  • 家族だけで搬送できない
  • 通院頻度が増える

高齢者の場合、救急搬送後にそのまま介護生活へ移行するケースも少なくありません。

特に骨折や脳卒中後は、以前のように一般タクシーを利用することが難しくなることがあります。

そのような場面で役立つのが介護タクシーです。

介護タクシーは、車いす対応や乗降介助を受けられるだけでなく、通院時の移動負担軽減にもつながります。

「退院後の移動が不安」「家族だけでは対応が難しい」と感じた際は、早めに相談しておくことで安心して在宅生活を始めやすくなります。

まとめ

救急車を呼ぶべきか迷ったときは、「命に関わる可能性があるか」を基準に考えることが大切です。

特に、

  • 意識障害
  • 呼吸困難
  • 胸痛
  • 麻痺
  • 激しい頭痛

などは、早急な対応が必要な可能性があります。

一方で、緊急性の低い利用が増えると、本当に救急対応が必要な人への支援が遅れてしまう恐れがあります

迷った際は、#7119などの相談窓口も活用しながら、適切に判断することが重要です。

また、高齢者では救急搬送後に移動支援が必要になるケースも少なくありません。退院後や通院時の負担を減らすためにも、介護タクシーなどのサポートサービスを上手に活用していきましょう。

この記事が、救急車の適正利用に役立つなら幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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