高齢や障害により、自由に外出できない方をサポートする「介護タクシー」。
しかし、一口に「介護タクシー」といっても、実は「介護保険」のキーワードで2つの種類に大別できます。
そのため料金に違いが出たり、利用方法が異なったりするのです。
初めての方にとっては解りにくく、介護タクシーというサービスの利用を妨げる原因にもなっています。
それは利用者の生活において「もったいない」ことではないでしょうか。
なぜなら、通院などの必要不可欠な外出に留まらず、買い物や観光・レジャーを楽しむことは生きる気力に繋がるからです。
そこで、当記事では介護タクシーの利用方法や注意点などを、介護保険との関連を踏まえて解説します。
介護保険タクシーとは
冒頭で前述したように、「介護タクシー」は介護保険の適用の有無によって、2つの種類に分けられます。
それが、介護保険の適用になる「介護保険タクシー」と、介護保険が適用されない「福祉タクシー」です。
しかし、一般的には両者をまとめて「介護タクシー」という通称が用いられています。
そのため事業者が掲げている「介護タクシー」という看板だけでは、保険が適用されるのかどうかが判断できません。
逆に「介護保険タクシー」と謳っているならば保険適用ですし、「福祉タクシー」という看板ならば適用外の場合がほとんどでしょう。
ただし、「福祉タクシー」でも、事業拡大時に諸条件をクリアし「保険適用」の許可を得ている場合もありますので、絶対とは言えません。
結局のところ介護保険が使えるかどうかは、事業所に直接確認するのが確実です。
事業者が謳っている名称から判断すると、下の表のようになります。
名称 | 介護保険の適用 |
介護保険タクシー | 適用 |
介護タクシー | 適用 or 適用外 |
福祉タクシー | 適用外 |

介護保険と連動する料金形態
介護保険を連動させた「介護保険タクシー」と、保険適用外の「福祉タクシー」では、料金と利用条件に違いが出てきます。
まずは、料金形態から確認しましょう。
そもそも介護タクシー(福祉タクシー)の料金には、3つの項目が含まれています。
それが「タクシー運賃」と「介助料」と「介護機器の使用料」です。
このうち「介助料」が介護保険と連動することにより、利用者は原則1割の自己負担で済むようになります。
例を挙げてみましょう。
保険を適用しない場合は…
- タクシー運賃…1000円
- 介助料…1000円
- 介護機器の使用料…1000円
- 合計3000円
これが保険を適用すると
- タクシー運賃…1000円
- 介助料…100円(←介護保険適用)
- 介護機器の使用料…1000円
- 合計2100円
ご覧のように介助料のみが一割負担となり、合計負担額は3000円→2100円となります。
決して、一割負担だからといって合計額が3000円→300円となるわけではありません。
介護保険タクシーの利用条件
介護保険タクシーは保険との連動により、料金が安くなります。
ですがそのかわり、利用するためにはいろいろな条件を満たす必要があります。
利用条件を確認していきましょう。
大きな条件は下記の5つです。
- 要介護度1~5の認定が必要
- ケアプランの作成
- 生活に必要な利用目的
- 一人で公共交通機関の利用が出来ない
- 家族の同乗ができない

1.要介護度1~5の認定が必要
そもそも、介護保険タクシーは訪問介護の一つである「通院等のための乗降の介助」を提供するサービスです。
つまり「介護保険タクシー」とは、介護保険適用の「訪問介護の一つ」と言えます。
そのためサービスを受けるためには、利用者が「要介護認定」を受けている必要があります。
ちなみに「要介護認定」とは介護サービスの必要度を判断するものであり、「要介護度」とは対象者がどの程度の介護を必要としているかを数値化したものです。
この要介護度が1~5であれば、介護保険タクシーを利用することが出来ます。
2.ケアプランの作成
ただし、要介護度1~5の認定を受けたからと言って、すぐに介護保険タクシーを利用できるわけではありません。
介護保険タクシーを利用するには、「ケアプラン」を作成してもらい、そこに記載してもらう必要があります。
他の介護保険サービスを利用するにも、ケアプランへの記載が必須なので、タクシーだけが特別というわけではありません。
3.生活に必要な利用目的
介護保険料…つまり税金から支払われるため、正当な理由がなければなりません。
当然、利用目的も限られてきます。
それが「生活に必要な利用目的」です。
具体的には、通院や金融機関など、「生活に必要」かつ「本人でなければいけない」ものに限られています。
そのため、買い物や観光などに介護保険タクシーを使うことは出来ません。

4.一人で公共交通機関の利用が出来ない
一人で公共交通機関の利用が出来ないことも、介護保険タクシーを使用するための条件に含まれています。
要介護認定を受けていていたとしても「1人でバスに乗って行き来できるなら、バスを使いなさい」ということですね。
適度な運動は身体の衰えを防ぐことが出来ますし、点数の節約にもなります。
その他の必要な介護料を割り振った方が、社会的にも本人の為にもなるでしょう。
5.家族の同乗が出来ない
また、介護保険タクシーには家族の同乗が出来ません。
というのも「同乗する家族がいるなら、家族が送迎すればよい。」という事になってしまうからですね。
ただし、認知症や医療的な理由によって家族の同乗が必要な場合には、例外的に認められるケースがあります。
移動中にどうしても介護が必要になる方は、ケアマネージャーに相談してみましょう。
介護保険タクシーを利用するには
前述したように、介護保険タクシーを利用するためには要介護認定を受けた上で、ケアプランに記載してもらう必要があります。
既に要介護認定を受けて、担当のケアマネージャーがいる方は、介護保険タクシーを利用したい旨を相談すると良いでしょう。
しかし、要介護認定を受けていない方は、利用するまでの流れが分からないと思います。
簡単に説明しますので、参考にしてくださいね。
- 要介護認定の申請
- 要介護認定の審査
- ケアプランの作成
- 事務所の選択

1.要介護認定の申請
介護保険を使用するには、審査を受けて介護が必要だと認定されなければなりません。
いわゆる「要介護認定」ですね。
そのためには、まず市町村の役場や地域包括支援センターなどの窓口で「要介護認定」の申請をしましょう。
申請の際に必要な書類は下記の3つ。
- 介護保険要介護認定・要支援認定申請書
- 介護保険被保険者証または医療保険被保険者証
- 主治医意見書
主治医意見書に関しては、申請後に役場から申請者に「主治医意見書」の用紙が渡されます。
それをもって、直接医療機関に記載の依頼をしてください。
依頼先の医療機関によっては、役所から直接送付する場合もあるので、窓口の担当者に確認するようにしましょう。
なお、申請の際は印鑑が必要なので、持参するようにしてください。
2.要介護認定の審査
申請をすると、後日調査員が自宅を訪問します。
この時、心身状態や生活状況の確認と家族との面談が行われます。
高齢者によっては、自分を良く見せたい思いから、無理に頑張ってしまう方もいます。
そのため、生活実状とかけ離れた要介護度に認定される場合があり得ます。
そういったことを防ぐためにも、ご家族も立ち会うようにしてください。
この面談と主治医意見書の情報をもとに、一次判定、二次判定が行われ、介護度が決定します。
3.ケアプランの作成
そして介護度が決定すると、ケアマネージャーが紹介されます。
ケアマネージャーとは介護サービスを熟知し、個々人にあった介護プラン…ケアプランを作成するプロフェッショナルです。
介護保険タクシーの利用を希望する方は、このタイミングでケアマネージャーにその旨を相談することになります。

4.事務所の選択
相談すると、ケアマネージャーからおすすめの訪問介護の事業所を紹介されるでしょう。
まれに複数の事業所を紹介されることもあります。
使いたい訪問介護が決まったら、ケアマネージャーを通して、事務所と契約することになります。
そして契約した事務所から、ケアプランに沿った内容で介護タクシーを利用することが出来るようになります。
逆に言えば、ケアプランに沿った使い方以外は出来ません。
そのため、細かい希望がある場合はケアマネージャーにしっかりと伝えることが重要です。
利用目的外の内容は福祉タクシーを活用しよう
前述の通り、介護保険タクシーは利用目的や条件がはっきりと決まっています。
通院、金融機関、選挙など「本人でなければならない内容」に限られています。
他にも、公共交通機関を利用できない、家族の同乗が出来ないなど、条件も課せられています。
これでは自身の目的にあった利用が出来ないケースもあるでしょう。
その場合は「福祉タクシー」を利用しましょう。
保険適用外の福祉タクシーは、料金的に多少高くはなりますが、自由度も格段に高くなります。
家族の同乗はもちろんのこと…
たまにはショッピングを楽しみたい。
家族と一緒に旅行へ行きたい。
孫の結婚式に出席したい…などなど。
福祉タクシーは、費用は全額負担ですが、あなたの希望を叶えてくれる有効な手段です。

まとめ~
介護保険タクシーは介護保険と連携し、料金の一部を安くすることが出来ます。
そのかわり、通院などに利用条件が限られたうえ、家族の同乗が出来ないなど制限も存在します。
用途と条件を加味しながら、介護保険タクシーと福祉タクシーを上手に使い分けましょう。
この記事が、介護タクシー・福祉タクシー利用の一助となれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。