介護タクシーや福祉タクシーは、移動に不自由を感じている方を送迎することが目的です。
しかし、中には送迎を断られた経験がある方も、いらっしゃるのではないでしょうか。
その多くは「利用者様の身体状態とタクシーの車両設備がマッチしない」というもの。
なぜなら、利用者される皆様の身体状況は千差万別。
それに対し、介護タクシー側は全ての状態に対応できる車内設備や資機材を用意が出来ないのが実情です。
しかし、介護・福祉タクシー側の標準的な資機材がわかれば、依頼時の目安になります。
その後、各社のHP等で車内設備の詳細を確認すれば、そのミスマッチも減らすことができるでしょう。
そこで、当記事では介護タクシー・福祉タクシーの標準的な資機材を紹介いたします。
資機材は安心送迎の重要な要素
介護タクシーや福祉タクシーの車載している資機材は４つの種類に大別できます。
- 搬送用資機材
- 観察用資機材
- 応急手当用資機材
- その他の資機材
それぞれの事業所や車両により、細かい違いはありますが、上記のいずれかに該当する物が取り揃えられています。
まずは、ベッドから車両までの移乗を助ける搬送用の資機材。
次に、利用者さまの状態を確認するための観察用の資機材。
そして、搬送中に体調を崩されたときのための応急手当用の資機材。
これらを取り揃えることにより、利用者様に安心感を持ってもらい、実際に安全な送迎を提供しています。
1.搬送用資機材
1-1.車イス
介護タクシーで最も多く利用されている搬送資機材と言えば、車イスです。
介護・福祉タクシーで使用している福祉車両のほとんどは車イスのまま乗車可能。
そのため、ご自分の車イスのまま乗車することができ、移乗による身体的負担の軽減に繋がります。
もちろん、タクシー事業者からレンタルしてもOKです。
1-2.ストレッチャー
いわゆる「担架」で、身体を水平の状態に保ったままの送迎が可能です。
寝たきり状態の方は、こちらの搬送器具が積載できるタクシーを選ぶと良いでしょう。
ただし、ミニバン以上の比較的大型のタクシー以上でなければ対応できないため、予約時に確認しておきましょう。
なお、点滴ポールも着脱可能のため必要な方は事前に知らせておくと良いでしょう。
1-3.リクライニング車椅子
車イスとストレッチャーの中間的な存在。
完全な水平状態とはいきませんが、それに近い状態まで倒すことが出来ます。
身体の具合によってこまめに、座った状態や横になった状態を切り替えたい方に向いています。
ほとんどの介護タクシーで利用できますが、軽バンタイプの車両ではリクライニング角度に限界があります。
予約時に確認しておきましょう。
1-4.スクープストレッチャー
縦に中央から分割することが出来る担架。
そのため、身体を動かすことが困難な方を両脇から分割した担架を差し込み、すくうようにして、担架内に乗せることが出来ます。
ベルトで固定することも可能で、高いところや低いところからの、ストレッチャーへの移乗にも適しています。
1-5.移乗ボード
ベッドからストレッチャーへの移乗時に活躍します。
ベッドとストレッチャーを平行に配置。その間に移乗ボード設置します。
次に、寝ている利用者の下にボードを差し込んだら、滑らせるようにして利用者をストレッチャー側に移動させます。
これにより利用者も介助者も大きな負担なく、移乗を行なえます。
1-6.レスキューシート
座ったままの姿勢で搬送するための担架です。
座面と背もたれの横に取っ手がつけられており、両脇に介助者がついて2名で搬送します。
狭い廊下や急な階段などでは、背中側と足側の前後につくことで、狭あいな場所でも搬送を可能にします。
2.観察用資機材
2-1.非接触型体温計
その日の体調を測る、最も簡単なものが体温測定です。
さらにその体温測定も、コロナ禍をきっかけに簡単に測定する機械が爆発的に普及しました。
それがこちらの非接触型の体温計です。
利用者の中には自分の体調を自覚していないかたもいるため、体温測定をこまめに行うことをお勧めいたします。
ただ、判定結果が外気温に左右されやすいため、首元の頸動脈で測定するとよいでしょう。
2-2.血圧計
高血圧などの病気は、意外に多くの利用者様が持っていらっしゃます。
そのため、介護タクシー・福祉タクシーでも事業所によって血圧計を準備しているところが増えています。
手首に巻く電子式が一般的で、簡単に測定することができます。
2-3.パルスオキシメーター
近年のコロナ禍により、多くの方に知られることになったパルスオキシメーター。
指にはめることで、SPO2…どのくらい血液の中に酸素が溶け込んでいるかが判ります。また脈拍も測定可能。
これらにより、簡易的に呼吸の状態や心臓の循環の状態を把握することが出来ます。
3.応急手当資機材
3-1.医療用酸素投与機材一式
呼吸状態が悪い時に活躍する医療用酸素です。
基本的には在宅酸素で加療中の方にご使用いただけます。
事業所や車両によって取り扱いの有無が変わりやすい資機材なので、予約時に依頼しましょう。
予約時に依頼があれば、準備してくれる事業者も多くいます。
3-2.応急処置資機材一式
応急手当に必要な資機材。
バンドエイドやガーゼ、三角巾などが取り揃えられた、いわゆる「救急箱」です。
最近では熱中症対策に冷却資機材を入れていることもあります。
中身は事業所によって細かい違いはありますが、ほとんどの車両に積載されています。
3-3.AED
AED…日本語で「自動体外式除細動器」といい、AEDは英語の頭文字を取った略称になります。
心臓が原因で倒れてしまった人を蘇生させるために、電気ショックを行う医療機器です。
しかし、電源さえ入れてしまえば、その後の行動を指示してくれるため、誰でも使用することが出来ます。
ただし、ほぼ車載されている民間救急と比べると、介護タクシー・福祉タクシーの車載率は低いです。
気になる方は予約時に確認しましょう。
4.その他の資機材
4-1.感染対策用資機材
コロナ禍により感染対策の重要性がクローズアップされました。
タクシー業界でも消毒清掃といった対策に、より一層力をいれています。
どの事業所も就業前の清掃はもとより、送迎ごとの消毒を実施しております。
4-2.空気清浄機
これもコロナ禍により、一層広まった機器といえるでしょう。
オゾン発生装置やプラズマクラスター空気清浄機などにより、車内のウイルスやカビ菌の除去・増殖抑制が期待できます。
ただし設置は車両ごとによるので、希望がある場合は、予約時に確認してみましょう。
4-3.ひざ掛け
ちょっと肌寒い時に使用したくなるひざ掛け。
これがあると体感温度が違いますよね。
意外に用意している事業所も多いです。
ただし、あくまで親切心のサービスということを心得ておきましょう。
まとめ～事業所選びの参考にしよう
介護タクシー・福祉タクシーの仕事は目的地までの「送迎」と、それに関わる「介助」です。
そのため、身体に負担が少ないよう搬送のための資機材が充実しています。
また、タクシーの事業者側にとっても、利用者さまとのミスマッチはなるべく減らしたいもの。
「出来る限り、要望を叶えてあげたい」と思いながら、日々の送迎に力を入れています。
たとえ事業所に自前の資機材が無くても、レンタル品を用意することができる場合も多くあります。
そのため、困ったことがあれば、まずは予約時の電話で確認してみましょう。
この記事が、介護タクシー・福祉タクシー利用の一助となれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
