お守り代わりの要介護認定とは-そのメリット・デメリット

お守り認定

「離れて暮らす親が心配。」

「最近、歳で足腰が衰えてきたと、よく電話で言っている。」

人はどうしても加齢とともに身体機能が衰えて来るもの。

離れて暮らす親が心配だ…という話はよく聞くものです。

現在は自分のことは自分で出来る親でも、いつか介護が必要な時が来るかもしれません。

病気はしていない健康体でも、足腰の衰えにより外出が困難になることだってあるのです。

そのような時のために、動ける今のうちから要介護認定を受けておこう、と考える方も決して少なくありません。

いわゆる「お守り認定」です。

ですが、そもそも介護サービスを受ける予定が無くても、介護認定を受けることが出来るのでしょうか?

そこで、当記事は介護サービス利用をしなくても介護認定を受けることの要否と、そのメリット・デメリットについて解説します。

要介護認定とは

要介護認定」とは、日常生活でどのくらいの介護が必要なのかを、数値化して客観的に判断したものになります。

公的な介護保険サービス(公的介護保険給付)を利用するためには、この要介護認定を受けねばなりません。

要介護状態にあると認定されると、様々な介護サービスを1~3割の自己負担で受けることが出来るようになります。

ただし、その度合いにより限度額が決められており、限度額を超えると全額自己負担になってしまうので注意しましょう。

歩く高齢者

この介護保険サービスは、公的介護保険の保険料を財源としています。

日本国民のほとんどが40歳で介護保険に加入し、保険料の支払いがスタートします。

加入者全員が保険料を負担し、必要な方へ給付する仕組みです。

つまり社会全体で、介護が必要な方を支えているのです。

要介護認定は、この「介護が必要な方」を見極めるための審査であるといえます。

要介護認定だけ受けることは可能

明確に介護サービスを受ける意思が無くても、介護認定だけを受けることは可能です。

事実、令和3年の介護保険認定者数は682万人。

それに対して介護サービス利用者は509万人。

つまり、173万人の方は要介護認定を受けていても、介護サービスを利用していないことになります。

サービスを利用しない理由についての詳細は解っていませんが、一般的には次のように考えられています。

  • 将来に備えての認定
  • 経済的要因
  • 制度の理解不足
  • 本人の拒否
  • 介護サービスの供給不足

認定を受けるメリット・デメリット

介護サービスを利用しない「要介護認定」は制度上できるものの、そこにメリットやデメリットは無いのでしょうか?

確認していきましょう。

メリット

メリットとしては下記のようなものがあります。

  1. 必要な時に即時利用できる
  2. 精神的なお守りとしての役割
  3. 補助金などの給付

1.必要な時に即時利用できる

介護保険の認定を済ませているため、いざ必要となった時に即時利用することが出来ます

通常は、申請から認定までに約2か月ほどかかるため、すぐに介護サービスを受けることは難しいのです。

その間は家族での介護が必要なため、遠方に住んでいる方などはより大変な状況となります。

どうしても無理な方は、民間サービスを利用することになるでしょう。

このような事態への準備となることが、最大のメリットと言えるでしょう。

ただし、即時利用と言っても、現実はサービスについての相談やケアマネージャやサービス事業者との契約があるため、明日からスグに使えるというわけではありません。

相応の時間がかかることは覚悟しておきましょう。

いざという時の備え

2.精神的なお守りとしての役割

介護サービスを利用するほどではないけど、身体が衰えてきているのが判ると不安になりますよね。

親子で離れて暮らしているとなおさらかも知れません。

そこで介護認定を受けて置けば「すぐに介護サービスを使える」という状態が、安心感に繋がります。

いわゆるお守り代わり…「お守り認定」です。

ただし実際に認定の手続きする上で、役所や地域包括支援センターとの繋がりが出来ますので、緊急時の相談先として機能するでしょう。

また、多少なりとも制度について知ることになるため、将来に活かせることもメリットと言えます。

3.補助金などの給付

市町村のサービスには、要介護認定が給付の条件になっているものもあります。

主だったものは以下の通り。

  • 家族介護の慰労金
  • バリアフリー化の住宅改修
  • 特定福祉用具の購入
  • 紙おむつの支給

もちろん、自治体によって制度の詳細は異なりますので事前の確認は必要です。

制度自体がない自治体もありますので注意しましょう。

また民間の保険でも、要介護認定が支払いの条件になっているものもあります。

デメリット

もちろん、サービス利用のない認定にはデメリットも存在します。

  1. いざといった時に利用できない場合もある
  2. 認定にかかる手間や労力
  3. 担当のケアマネージャーがつくわけではない

1.いざといった時に利用できない場合もある

「いざ必要になった時の為に、要介護認定を受けていたのに!」

という、声が聞こえてきそうですが、必要な介護サービスが利用できない場合も往々にしてあります。

なぜなら要介護度が足りていないから。

将来に向けて要介護認定を受けても、要介護度は申請時の状態で判断されます。

必然的に、お守り代わりに認定を受けた方の要介護度は総じて低くなります。

そのため、必要なサービスを受けたくても、要件を満たさない場合がでてくるのです。

例えば、要支援1の方は介護保険タクシーの利用は出来ません。

通院のために必要でも、要介護1~5でなければ介護タクシーは利用できないのです。

その時は認定を受けなおさねばなりません。

お守り認定は「ただの二度手間」という場合もありますので、覚えておきましょう。

二度手間

2.認定にかかる手間や労力

要介護認定は申請から認定まで、多くの手間がかかります。

申請書類の準備、保険証の準備、主治医への相談と意見書の依頼、認定調査への立会いなど…

お守り代わりにするにしては、労力が見合っていないかもしれません。

申請自体には費用がかからないので、金銭的な損はしませんが、いわゆる「タイパ」は悪いでしょう

特に厄介なのが、要介護認定の有効期限です。

初回なら原則6ヵ月。

更新申請をしておかないと、期限切れでまた未認定状態となってしまいます。

3.担当のケアマネージャーがつくわけではない

手間をかけて申請し、認定を貰ったとしても、担当のケアマネージャーがつくわけではありません。

ケアマネージャーは継続して介護サービスを利用する段階になって、契約して担当になってもらうのです。

介護業界はサービスを利用しない方にまで、担当をつけるだけの人的余裕はないのです。

相談だけであれば、介護認定の要否に関わらず、地域包括支援センターで受け付けています。

そのため、お守り認定を無理して行う必要はありません。

移動の悩みだけなら「お守り認定」は必要ない

どんなに通院などの移動に困っていても、それだけでは介護保険タクシーは利用できません。

前述したように、介護保険タクシーを利用するには要介護度1~5の状態に認定されている必要があるからです。

さらには「1人で公共交通機関を使えない」「同乗できる家族がいない」などの諸条件もあります。

いずれにせよ介護保険タクシーの利用には、ケアプランに記載が必要です。

そのため「まずはケアマネージャーに相談」することから始めましょう。

また、要介護未認定の方や要介護度が低い方でも、移動に関しては介護保険が使えなくてもは大きな心配ありません。

なぜなら「福祉タクシー」を活用すればよいからです。

福祉タクシーは移動に困っている方であれば、利用に大きな制限はありません。

料金に関しても、一回あたりで見ればそこまで大きな差異は生じませんし、補助制度だってあります。

家族の同乗もOKで、使用用途の自由度も格段に高いのです。

したがって、移動の悩みだけであれば、デメリットもある「お守り認定」は必要ないと言えるでしょう。

お守り認定は家族との話し合いが重要

まとめ~お守り認定は家族との話し合いが重要

お守り代わりの要介護認定は、制度上申請することは可能です。

ただし、精神的なメリットと実務的なデメリットがありますので注意が必要です。

いずれにせよ、介護タクシーを必要としている方の多くは、要介護認定を受けている実態があります。

将来の不安に備えて、要介護認定を受けておくかどうかは、家族との話し合いが重要です。

お守り認定のメリット・デメリットをよく理解して決めましょう。

この記事が、介護タクシー・福祉タクシー利用の一助となれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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