「民間救急ってなに?どんな人が、どんな時に利用すればいいの?」
「救急車とどう違うの?」
聞いたことはあっても、実際に利用した方は少ないのではないでしょうか?
本記事では、民間救急の概要や行っているサービスをわかりやすく解説していきたいと思います。
介護タクシー・福祉タクシー・民間救急などの利用を考えている方。
移動や送迎にお困りの方。
弊サイトの各記事をご一読いただけると幸いです。
民間救急とは
「民間救急」とは、緊急性が低い傷病者を搬送する民間事業者のことです。
さらに「民間救急」という言葉は、その事業者を指し示すだけではなく、その使用車両や搬送サービスに対しても幅広く使われています。
一般的には、消防庁が管轄する「患者等搬送事業(一般乗用旅客自動車運送業)」を指します。
ただし、消防救急…119番と区別する必要があるため「民間救急」と呼ばれているのです。
消防庁の指導基準に基づくと、正式には「民間患者等搬送事業」となります。
通常は、救急車を呼ぶほどじゃないけど、具合が悪い…
でも、自家用車を運転するのも、タクシーで行くのも心配…といった方に最適なサービスです。
搬送乗務員の資格と搬送車両
民間救急に必要な資格
民間救急の事業者は消防から「患者等搬送事業」として認定を受けています。
搬送してくれる乗務員も患者搬送講習を修了し、「患者等搬送乗務員適任証」を発行されています。
これにより心肺蘇生法やAEDの取扱いをはじめとした応急手当や、病人の搬送法などの基礎知識や技術を習得しています。
その上、乗務員として勤務を続けるには、2年ごとの再講習が必要とされています。
依頼する立場からみれば、搬送技術のレベルが維持されており、安心に繋がりますね。
さらに、事業所によっては医療行為に対応できるよう看護師や救急救命士の資格を採用条件にしているところもあります。
また、運転者は旅客自動車運送事業に必要な「第二種運転免許」の取得が必要になります。
これは安全搬送できる運転技術の保証に繋がる資格です。
これらの資格を有した「民間救急」は、応急手当や運転・搬送を安全に行えることが認定された事業者であると言えるでしょう。
民間救急の搬送車両
民間救急で使用する車両は「転院」などにも使用出来るよう、「医療カー」としての機能が求められます。
例えば、ストレッチャーに寝たままの状態で搬送できるのはもちろんのこと、各種医療資機材を搭載していなければなりません。
これらを備えた上で、所轄の消防局・消防本部から審査を受け、「患者等搬送用自動車」として認定される必要があります。
ただし、同じ「民間救急」でも、搭載資機材等は事業所ごとに違いがあり、サービス内容は異なっています。
あなたが望むサービスが提供されていないこともありえますので、予約前に確認しておきましょう。
車両自体は、消防で使われていた救急車を中古で購入し、サイレン等を取り外して使用している民間救急もあります。
運用体制
原則的に民間救急は運転手を含めて2名体制で運用しています。
これにより人手が必要な車両までの搬送も対応でき、搬送中も傷病者から目を離すことなく目的地まで行くことが出来ます。
この継続観察の結果、不意の病状悪化に即座に対応することが可能となります。
ですが、下記のいずれかに該当する場合は乗務員1名でも運用できます。
基本的には運転手以外の医療系有資格者が同乗する場合や、医師により緊急性が少なく問題ないと判断されているケースになります。
- 乗務員以外に医師、看護師、救急救命士が同乗する場合
- 退院する場合
- 医師により入院が事前に指定されている場合
- 定期的な通院の場合
- 医師の指示による転院の場合
- 社会福祉施設や保養施設などへの送迎の場合
民間救急は、傷病者を安全に搬送できるよう「人員」「車両・装備」「体制」が整えられています。
安心してご利用ください。
民間救急を利用できる方
民間救急の搬送サービスの対象となるお客様は下記の通り。
- 身体障害者手帳の交付を受けている方
- 要介護認定を受けている方
- 要支援認定を受けている方
- 肢体不自由や内部障害、知的障害、精神障害など、さまざまな障害により、単独での移動が困難な方でその他の公共交通機関を利用することが困難な方
- 消防機関またはそれと連携するコールセンターを介して、民間救急の搬送サービスの提供を受ける方
基本的には、何らかの障害で移動に不自由のある方や要介護・要支援の状態にある方が対象となります。
ただし事業所によっては、積載資機材などの関係で依頼をお受けできない場合もあるので、予約時に確認が必要です。
上記対象者のほかに、付き添いの方も同乗することが可能です。
民間救急のメリット
では、救急車並みの装備を持ち、搬送体制の整った民間救急では何が出来るのか?
その特徴を見ていきましょう。
まずはメリットから。
- 寝たきりや重篤な方の送迎が得意
- 通院や退院、転院での利用が可能
- 個人医院や希望の場所へ搬送してもらえる
- 遠方への搬送に適している
- 旅行や冠婚葬祭にも利用可能
1.寝たきりや重篤な方の送迎が得意
民間救急は介護タクシーと異なり、ほぼ全ての車両がストレッチャーを積載可能です。
そのため、水平状態を保たねばならない寝たきりの方の搬送も可能です。
もちろん介護タクシーでも、ストレッチャーが使用できる車両も多くあります。
しかし、民間救急は乗務員2名以上が原則。
そのため、1名が運転中でも、もう1名は傷病者を継続観察することが可能です。
乗務員が原則1名の介護タクシーでは、目を離さなければならない場面もあることでしょう。
その点からも、重篤な方の搬送は「民間救急」が適していると言えます。
2.通院や退院、転院での利用が可能
民間救急は消防救急と違い、緊急性が無くても利用できます。
そのため、通院などの日常用途にも利用が可能です。
例えば…
緊急性はないけど寝たきりで移動は困難。でも定期的な通院が必要といった方。
移動に不便があるが病気は治り、退院することになった方。
緊急性はなく、3次医療機関の病院から2次医療機関の病院へ転院することになった方。
…などの利用に適しているでしょう。
3.個人医院や希望の場所へ搬送してもらえる
消防救急はその特性から、原則2次及び3次医療機関に指定された総合病院にしか搬送できません。
しかし、消防救急では搬送してもらえない個人医院などへの搬送も、民間救急なら可能です。
希望先の病院があるのなら事前に予約したうえで、搬送を依頼しましょう。
また、病院に限らず希望の場所へ搬送することも可能です。
例えば、駅や空港、老人福祉施設などにも送迎してもらうことが出来ます。
介護保険タクシーでは必須となる、送迎理由などの条件が課せられることもありません。
4.遠方への搬送に適している
就職や結婚などにより地元を離れてしまった方の中には、人生の最後に地元に戻りたいと願う方もいらっしゃると思います。
しかし、それが既に寝たきりで移動をすることが困難だった場合はどうでしょう?
家族での搬送は無理があると思います。
それは故郷に住む親御さんを近くに呼びたい、と願っている息子さん、娘さんもそうではないでしょうか。
そのような時の安心安全な長距離移動にこそ、民間救急を選びましょう。
また、難病のため移動は困難…しかし遠方にある○○病院でなければ治療は難しい。
…などといったケースにも民間救急は適しているといえるでしょう。
5.旅行や冠婚葬祭にも利用可能
高齢者の中には持病や移動困難などの理由により、旅行や冠婚葬祭への出席を控える場合があります。
しかし、民間救急を利用すればそれらのイベントへ参加することも可能です。
現地までの移動そのものは、民間救急の得意とするところですし、搬送スタッフは万が一の事態に備えて応急手当等のスキルを習得しています。
応急手当が出来るスタッフがイベントに付き添い、医療器具を搭載した車両が待機していることで、万が一の事態にも対応できます。
そうすることで、心置きなく観光や式典を楽しむことが可能になるでしょう。
事業所に確認し、待機サービス、付き添いサービスを実施している民間救急を選びましょう。
移動に不自由を感じている方で…
- 緊急性がないけれども、医療行為が必要(必要になるかもしれない)
- 家族では目的地へ連れていく事が困難
- プライベートで活用したい
…という方は、まずは各事業所へご相談ください。
民間救急のデメリット
次にデメリットを紹介します。
- 緊急走行は出来ない
- 料金がかかる
- 利用には予約が必要
1.緊急走行は出来ない
民間救急は緊急性が無いことを前提としているため、緊急走行が出来ません。
そのため傷病者が搬送中に緊急事態に陥ってしまった場合は、消防救急を要請することになります。
そもそも緊急走行には赤色回転灯や前照灯の点灯、基準以上のサイレンを使用するなど、いくつかの要件があります。
しかし、民間救急車はそれらのパーツを取り除いているため、緊急走行が出来ないようになっています。
2.料金がかかる
当然ではありますが、民間救急を利用するには料金がかかります。
ですが、それは消防救急と比較するからであって、提供サービスに料金を支払うことは当たり前ですね。
もちろん、事業所も料金に見合うサービスを提供するよう努めてます。
ただ、一般タクシーや介護タクシーと比べても、民間救急は必要な資機材や人員が多く料金は割高になってしまいます。
同じ距離や時間を搬送しても、事業所によって料金が異なることがありますので、利用前に見積りをしてもらいましょう。
3.利用には予約が必要
民間救急を利用するには予約が必要になります。
電話1本でスグに来てくれるわけではありません。
車両や必要資機材の準備、人員の確保、搬送先への受け入れ了承などが必要になるからです。
そのため利用を考えている方は早めの予約し、傷病者の状況や目的等を明確に伝えましょう。
最後に
民間救急は、移動に不自由を感じており、時に医療行為が必要になるかもしれない方にとって、最後の砦といえる移動手段です。
思い出の地へ旅行に行きたい。
孫の結婚式を祝いたい。
最後の期間をゆっくりと地元で過ごしたい。
民間救急なら、そんな大切な願いを形にすることができるのです。
あきらめずにまずはご相談ください。
本記事は以上です。
最後までご覧くださりありがとうございました。